④鈴木さんのこと
本番に向けてより熱心さが増していた1週間前、
「昨日急に具合が悪くなって、病院に言ったら末期と言われたんです。発表会も出れるかどうか…そういうわけで申し訳ないです」
いきなりの急展開に強い衝撃が。ですがご本人はそんなものではないでしょう。
私は実家の両親をがんで亡くしています。ですので、そのショックや不安だけでなくこれからの経過もなんとなく想像がつくので、鈴木さんのお力になれることはできる限りしたいと思いました。
その2日後、電話で
「どうも具合が悪いからこれから病院に行くので、レッスンは欠席します」
もし急に倒れたり入院などになったらと思うと心配で心配で、すぐお宅に行ってみましたらもう出かけたあと。一瞬迷いましたが、私自身後悔したくないと思い、すぐ病院まで追いかけました。
待合室で一人座っている鈴木さんはびっくりした様子でしたが、
調子悪い時って心細いですよねと付き添うことを申し出ると「それは…はい、心細い、たしかにね」と。
とりとめのない話をしながら診察を待ち、これから点滴をするというのでそこで私は帰宅しました。鈴木さんが少しでも気がまぎれればという思いでしたが、夕方電話が来て、
「点滴したら少しいいかもしれません。発表会については…」ドクターストップが出たようですが、本番を楽しみにしていた鈴木さんのお気持ちを思うと、私は何とかしてあげたいと強く思った。
「では、当日の調子がよければ出る、ムリなら欠席でかまいませんから、様子を見ましょう」ということに。
あとほんの数日だけ、何とか奇跡が起きないかと神に祈る3日間。
そして神様は願を叶えてくださった。
当日、鈴木さんからしっかりしたお声で「行けます」と。
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