楽譜の選びかた
今日は、テキストの選びかたではなく楽譜の出版の選びかたについてです。
基礎を学んで実力がついてきたら、バッハやモーツァルト、ショパンといった大家の作品を弾くようになります。
この時、その出版を選ぶか?というのがポイントになってきます。
どういうこと?楽譜にちがいでもあるの?
そうなんです。同じ曲でも楽譜によっていろいろ違いがあるんですよ。
たとえばショパンのワルツ、
この曲集を購入するとき、日本の出版社の本がいろいろ流通していますが、
私はこのあたりのレベルになったら、原典版を使うようにしています。
原典版って?
原典版というのは、作曲者本人が書いた楽譜に近いとされているもの、です。
じゃあ、
他の楽譜はショパンのものとはちがうの?
うーん、音符などは基本的に同じですが、簡単に言うとそれ以外のものがちがう、のです。
えー?たとえば?
たとえば、スラーの位置、タイがあるかどうか、強弱記号、楽語、指の番号はかなり違うし、時にはシャープがあったりなかったり、和音の構成音がちがうことも結構あります。
平たく言うと、
原典版にはいろんなことがあまり書かれていないのです。
それはなぜか?
当時は、作曲した人がそれを自分で弾いていたので細かく書き込まなくてもすべてわかっているから。本当に最小限のことしか書かれてないんですね。
でも、
それだと後世の我々には戸惑うことも出てくる。
ここはフォルテ?それともピアノ?指使いをどうしたらいいの?
それを助けるために、各出版社では校訂者という人に依頼して、練習しやすいようによかれと様々な記入をしているわけです。
さて原典版を使う意義ですが、
ある程度実力や感性がついてきた生徒さん、または指導経験がある場合は、原典版で練習するのはとても大事なことと思います。
ショパンはどうしてこう作ったのか?当時の楽器や世の中の流れはどうだったのか?など考える隙間のようなものも生まれるし、
なによりアーティキュレーション(スラーやスタッカートの場所)の違いはフレーズの解釈に大きな影響が出るから。
これが一番大きいことだと私は思っています。
そして、原典版を使うことで演奏や表現は広がり、あなたのショパン、あなたのベートーヴェンを作っていけるのです。
ほとんどの作曲家、特に古典やロマン派の作曲家は、
自分の作った曲を、演奏者や聴衆それぞれのイメージでとらえてほしいと思っていたとのこと。
誰かの指示やまねではなく、あなただけのイメージで弾いてくださいね♬
私自身、実は原典版を使うようになったのはピアノの先生になってから。
私が師事していたけいこ先生は故・井口基成先生の弟子。そのためレッスンで使う本はすべて、春秋社・井口基成先生のものでした。
卒業してからだんだんと原典版を使うようになり、井口基成版との違いを学び、どちらからもいいとこどりを。特に指使いは、原典版が必ずしも最良というわけではないので、ほかの指使いを試したいときには井口先生の楽譜だけでなく他の出版も参考にするなど、いろいろ勉強させていただきました。こうしてレッスンするようになってつくづく思うことですが、知識はあった方がいいし、いろんな弾き方や楽譜を知っていた方がいい。結果的に、井口版でレッスンを受けてきたからこそ、原典版の意味もよく分かるようになった。
でも生徒さんたちはそこまで追及できないでしょう?そこまでの時間はなくて当然。
だから、先生が得た知識をコンパクトにしてあなたたちに教えていくよ。
ふーんそうなのか、と受け取ってくれればそれで充分ですよ。
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